現代備忘録(仮)

どこかの誰かにとってはきっと有益であろうと思われる記事を書いていきたいです。

理系院生の国家公務員採用試験受験および民間就職活動の記録(2/3)

前回に引き続く内容の記事です。
今回は、以下の3から6について述べます。

1.行政区分と技術区分
2.総合職採用と一般職採用
3.採用までのステップ(総合職・一般職)
4.基礎能力試験対策(総合職・一般職)
5.専門試験対策(総合職・一般職)
6.専門記述式試験対策(総合職)
7.官庁個別業務説明会
8.政策課題討議試験および人物試験
補足.民間企業におけるマッチング面談について
9.官庁訪問(総合職・一般職)

 

 私は就職活動時期、国家公務員の試験スケジュールが良く分からず難儀しました。7月頭位まで「最終合格って結局何?」「官庁訪問っていつするん?」という感じでした。

 スケジュールが分かりにくい理由はズバリ、国家公務員採用試験と官庁訪問の実施機関が異なるためです。国家公務員採用試験は人事院の管轄で、一方、官庁訪問を実施するのは各省庁等(国土交通省内閣官房、税関、造幣局等)です。両者の採用活動が微妙にオーバーラップしているため、初見では非常にややこしいことになっています。

 以下「3.採用までのステップ(総合職・一般職)」において、人事院実施の選考等には【人事院】、各省庁実施の選考もしくは選考的なものには【各省庁】と記しました。人事院のHPより分かりやすく書いたつもりです。

 また後述しますが、官庁訪問とは各省庁が実施する面接試験と考えて下さい。説明会ではありません。選考プロセスの一つです。参加しないと、ほぼ採用されません。

 

3.採用までのステップ(総合職・一般職)
 理系院生の場合、「総合職院卒の技術区分」と「一般職大卒の技術区分」を併願することが出来ます。以下に記した[残存率○○%]は、受験申込者数に対する、各選考を通過した受験者数の割合です。この数字は私が受けた区分のものなので、区分もしくは年度によっては全く異なる場合があります。参考程度にお願いします。

===総合職院卒技術区分の場合===
受験申込[残存率100%]
 【人事院】4/1~4/8
  ↓
①一次試験(基礎能力と専門のマーク試験)
 【人事院】5/24
  ↓
 一次試験合格発表[残存率30%程度]
 合格すれば二次試験を受けることが出来る
 【人事院】6/9
  ↓
 一次試験合格者向けの官庁個別業務説明会
 説明会と称しながら半分選考っぽいことをしている省庁もあるようです
 詳しくは「7.官庁個別業務説明会」で説明します
 【各省庁】【人事院】6月中旬~7月下旬に数回
  ↓
②二次試験(専門記述、院試のような記述試験)
 【人事院】6/28
  ↓
③政策課題討議試験(いわゆるGD)と人物試験(3:1の個別面接)
 【人事院】7/2~7/17
  ↓
 最終合格発表(①~③の点数を総合して合否が出る)[残存率15%程度]
 最終合格して初めて省庁に面接を受けに行く為の権利を得る
 (最終合格する=省庁に面接を受けに行く為のチケットを得る≠内々定
 【人事院】7/31
  ↓
 官庁訪問予約開始
 8/5訪問希望なら予約不要の場合も有
 【各省庁】8/5
  ↓
官庁訪問第一クール(2~4回程度の面接)
 【各省庁】8/5~7
  ↓
 通過[残存率10%程度]
 官庁訪問第二クールへ進むことが出来る
  ↓
官庁訪問第二クール(2~4回程度の面接)
 【各省庁】8/10~12
  ↓
 通過[残存率不明]
 官庁訪問第三クールへ進むことが出来る
  ↓
官庁訪問第三クール(2~4回程度の面接)
 【各省庁】8/13~14
  ↓
 通過[残存率不明]
 官庁訪問第四クールへ進むことが出来る
  ↓
官庁訪問第四クール(1~2回程度の面接)
 【各省庁】8/17
  ↓
 通過=内々定![残存率5%程度]
 【各省庁】8/18

 上記において、①~③が人事院が実施する国家公務員採用試験に当たり、③の試験をパスすることを「最終合格」と言います。最終合格して初めて、希望省庁に行って面接を受ける権利を、チケットを得ることが出来ます。

 なお、チケットの有効期限は3年です。つまり、2016年の大学四年の夏に大卒枠で③までパス(=最終合格)し、その翌々年、2018年の修士二年の夏に④~⑦の官庁訪問(=希望省庁での面接)をパスして内々定を貰い、翌年2019年の4月から国家公務員として働き始めることも出来ます。
 官庁訪問については「9.官庁訪問(総合職・一般職)」で詳しく説明します。

 

===一般職大卒技術区分の場合===

受験申込[残存率100%]
 【人事院】4/9~4/20
  ↓
①一次試験(基礎能力と専門のマーク試験、および小論文)
 【人事院】6/14
  ↓
 一次試験合格発表[残存率60%程度]
 合格すれば人物試験を受けることが出来る
 【人事院】7/8
  ↓
②一次試験合格者向けの官庁個別業務説明会
 説明会という名の選考です。必ず、絶対に参加しましょう
 詳しくは「7.官庁個別業務説明会」で説明します
 【各省庁】【人事院】8/13~8/17辺り
  ↓
③人物試験(3:1の個別面接)
 【人事院】7/22~8/10
  ↓
 官庁訪問予約受付開始
 【各省庁】8/18
  ↓
官庁訪問第一回目(複数回の面接)
 【各省庁】8/20~
  ↓
 通過[残存率不明]
 以降、官庁訪問が何回あるのか分かりません
 某掲示板を見る限り、計一回か二回程度のようです(不確か)
  ↓
 最終合格発表(①と③の点数を総合して合否が出る)[残存率50%程度]
 最終合格して初めて出先機関に面接を受けに行く為の権利を得る
 (最終合格する=出先機関に面接を受けに行く為のチケットを得る≠内々定
 【人事院】8/25
  ↓
 通過=内々定![残存率30%程度]
 【各省庁】8/25~

 最終合格と有効期限については、上記の総合職院卒技術区分の場合と同じです。

 平成27年度一般職大卒ではどういう訳か、官庁訪問が大方修了した後に最終合格不合格が発表されるという意味不明なスケジュールでした。そのため、官庁訪問で散々面接をして「是非ウチに来てくれ!」と言われても、その後最終合格が得られなければ官庁訪問での面接は全て意味が無くなり、結局採用されません。何故このような日程になってしまったのかは分かりません。

 官庁訪問については「9.官庁訪問(総合職・一般職)」で詳しく説明します。

 

4.基礎能力試験対策(総合職・一般職)
 マーク式の試験で、出題範囲は国語、英語、推理、計算、理科、社会です。総合職は30問、一般職は40問で、試験時間は総合職一般職ともに2時間20分です。国英理社はセンター試験等でお馴染の問題です。出版社や予備校各社から過去問集が出版されているので、必ず確認しておいて下さい。人事院のHPからでも例題を見ることが出来ます[1]。
 私の場合、社会の教養が無さ過ぎたので、以下の参考書を一冊読んで最低限の勉強をしました。

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 社会科学

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 社会科学

 

  一番大事なのは推理と計算です。その理由は、全問題数の3~4割を占めていてウェイトが大きく、また対策をすればするほど点数が伸びる傾向があるからです。例年同じような類の問題が出題されているので、過去問や問題集でひたすら問題を解き、解法を覚えることで、バンバン解けるようになります。
 参考までに、私が使用した参考書を紹介しておきます。

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 判断推理

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 判断推理

 
公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 数的推理

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 数的推理

 
国家一般職[大卒]教養試験 過去問500 2016年度 (公務員試験 合格の500シリーズ 3)

国家一般職[大卒]教養試験 過去問500 2016年度 (公務員試験 合格の500シリーズ 3)

 

 4ヶ月ほどかけて、過去問ゼミを各2周+3年分の過去問を解きました。総合職と一般職、行政と技術で、基礎能力試験対策に大きな違いはありません。とにかく問題に慣れて下さい。

 おおよその目安ですが、技術区分の場合、全体平均は5割、合格者平均は6割くらいだそうです。合否は他の試験との合算で決まりますが、総合職一般職ともに、3~5割で下位合格、5~7割で中位合格、7~9割で上位合格くらいのイメージです。他が平均程度取れているのなら、6割あれば合格は堅いです。
 ちなみに私は、総合職で6割程度、一般職も6割程度でした。

 
5.専門試験対策(総合職・一般職)
 マーク式の試験で、出題範囲は各区分の専門分野です。総合職一般職ともに40問、試験時間は総合職が3時間30分、一般職は3時間です。なお、総合職については一部の必須問題を除いて、問題を選択して解くことが出来ます。

 専門試験については過去問を解くに尽きます。とは言え、基礎能力試験のようにまとまった過去問集は出版されていません。大学の就職課やキャリア課が保管している場合が多いようなので、早い目に確認しておきましょう。私も大学の就職課で過去問のコピーを取らせてもらい、一般職の過去問を3年分ほど解きました。

 おおよその目安ですが、技術区分の場合、全体平均は5.5割、合格者平均は6.5割くらいだそうです。合否は他の試験との合算で決まりますが、一般職の場合、4~6割で下位合格、6~8割で中位合格、8~10割で上位合格くらいのイメージです。他が平均程度取れているのなら、7割あれば合格は堅いです。総合職はマイナス1割くらいで換算するイメージです。つまり、6割取れれば何とかなります。
 ちなみに私は、総合職で5割程度、一般職は8割程度でした。

 

補足
 一般職大卒の技術区分では、基礎能力試験、専門試験と同日に、小論文試験が課されます。問題用紙には、3分あれば十分読める程度の文量で問題文が書いてあります。お題は、例えば現代の社会問題や、科学技術の発展、さらには東京五輪等時事に関するテーマ等らしいです。自分が受けた時は2020年東京五輪がお題でした。で、結局何が問われるのかと言うと、私が受験した区分では、いずれの年度も「まず現状と問題を述べ対策を挙げよ。また技術系国家公務員としてどう貢献出来るかを書け」といった内容でした。

 うろ覚えですが、B4裏表くらいの大きさの横書きの作文用紙が渡されます。何故かルビ(振り仮名)を振るスペースがありましたが、私はルビを振らず提出しました(減点とかあるのかな...)。

 噂ではおもて面を8割以上埋め、危険な思想が無く、著しく論理が破たんしておらず、ギリギリ判読可能な文字を書いていれば、内容が多少アレでも大概は何とかなるようです。とは言え、受験者の1割くらいは小論文で弾かれているらしい(某掲示板の噂です)ので、油断せず望んで下さい。ニュースを軽く観ておく程度で、特に対策はいらないと思います。


6.専門記述式試験対策(総合職)
 記述式の試験で、出題範囲は各区分の専門分野です。総合職のみに課され、院卒の場合、大問2つを選択して解答します。試験時間は3時間30分です。

 難易度、問題構成、出題範囲ともに旧帝大学院入試レベルです。とても難しかったです。情けない話ですが、自分は半分も解くことが出来ませんでした。専門記述試験についても、専門試験と同様、大学の就職課やキャリア課が過去問を保管している場合が多いようなので、早い目に確認しておきましょう。自分は民間企業の就職活動が忙しく、何も対策をしないまま試験に臨んでしまいましたが...。物理量や専門用語の定義、各種方程式や公式を見直すだけでも意味があると思います。

 おおよその目安ですが、全体平均は5割程度のようです。4~5割で下位合格、5~6割で中位合格、6割以上で上位合格くらいのイメージです。記述に関しては、現時点で自分の点数も知ることが出来ていないので、かなり適当なイメージです。書いておいてアレですが、あまり参考にしないで下さい。
 ちなみに私は、4~5割程度でした(予想)。

 

 筆記が全て終了した段階で、私は総合職についてはほぼ完全に諦め、民間企業と一般職に注力しました。基礎6割+専門5割+記述4割では、GDと面接でよほど高い点数を取らないと勝負になりません。しかしいざ蓋をあけると、席次下位ながら最終合格していました。おそらく、民間企業で散々GDや面接を受けまくったお陰で(沢山落とされましたが...)、公務員一本の周りの受験生よりも場慣れ出来ていたんだと思います。その点では、民間企業の就職活動と並行していて良かったと思いました。


本日は以上です。

7.官庁個別業務説明会
8.政策課題討議試験および人物試験
補足.民間企業におけるマッチング面談について
9.官庁訪問(総合職・一般職)

については、次回の記事で述べます。

 
以上

 

[1]人事院 国家公務員試験採用情報ナビ 試験問題例 院卒・大卒程度
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/mondairei/mondairei_top.htm